君がいた風景
「まぁ…さっきの少年のこととか…いろいろとね」


春人は陽子の真剣な眼差しに緊張しながら答えた。


「そっか…、あんまり話したくない感じなのかな?まぁ、いいや話そうと思ったときに話してくれれば。ねっ!」


どこかで覚えのある言葉に、春人の胸は痛んだ。


話したいと思ったときに話してくれればいい…。


それはまさに春人が真奈美に言った言葉だった。


「陽子さん、悪い…俺もう帰るわ…」


春人は金をテーブルに置くと、店を出て行った。


「えっ?ちょっ青山さん待って!!」


慌てて会計をして陽子は春人を追いかけた。


「青山さん!青山さん!」


走って追いついた陽子は春人の腕を掴んだ。


「君といると…ツライんだ…」


「えっ…」


「君を見ていると…ある人を思い出す…それがツライんだ…」


春人の体は小刻みに震えていた。
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