君がいた風景
彼女は、スケッチブックに絵を描いているようだった。


川の絵だろうか…。


春人はこんなに絵に描いたような女性がどんな絵を描くのか見たくなり、彼女に近づこうとした。


「春人ー!!」


少し歩くと、後ろから誰かに名前を呼ばれた。


その瞬間、彼女はビクリとして春人のほうを見ていた。


「春人!ハァハァ…やっぱり春人だ!」

「拓磨…どした?」

勢いよく走ってきた拓磨は息を切らしながらも笑顔で、春人の裾をつまんだ。


さっき写真を撮った拓磨の友達みんなに自慢され、きっと写真を撮ったのは春人に違いないと思って追いかけてきたらしい。


「ずるいぞっ!オレも撮ってよ!」

拓磨は頬を膨らませて春人の服を引っ張った。


「わかったよ、じゃぁみんなの所に行くか!」

「うん!早くっ早く行こっ!」


拓磨に強引に引っ張られながら、後ろを振り返ったが、もうあの綺麗な女性はいなかった。


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