タナトスの光
翌朝起きると、お母さんはもう、会社に出かけていた。

お父さんが死んでから、もう五年。
お母さんとあたしのふたり、母子家庭になって、もう五年も経つんだ。

金銭面で、あたしに不自由をさせないようにと。
お母さんは、朝から晩まで一生懸命働いていた。

そのお陰であたしは、私立の女子高にも通えるし、こんな立派なマンションにも住むことが出来る。

でも。
お父さんが生きていた頃には、毎日あったなにかが、なくなってしまったような気がする。

仕方がないと分かってはいても。
それはそれで、ときどき寂しいと思うこともある。

ウソだ。

本当は、毎日がとても寂しい。

『おはよう。今日も仕事で、遅くなりそう。昼食と夕食は、これで適当に食べてね。お母さんより』

テーブルの上には、そんな紙切れとともに、千円札が三枚。
ラップがかぶったお皿の中に、目玉焼きとウィンナー、切ったトマトが二切れ置いてあった。

食欲がなかった、あたしは、お金だけを手にして、あとは全部、冷蔵庫に入れてから。
制服に着替えて、いつものように学校へと向かった。
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