タナトスの光
この果物ナイフを静かに引けば、お父さんの世界に行ける。

ソファが赤く、汚れるかな?
お母さんが後で、掃除するのが大変かな?

そんなことを思いながらも、あたしがナイフを動かそうとした、まさにその瞬間。

「死んじゃう系?みたいなぁ?」

突然、女の子の声。

あたしが驚いて、顔を上げると。

ダボダボの黒いローブを着込んで。
自分の身長よりも大きな鎌を持った女の子が。
テレビの上に腰をかけて、こちらを見つめている。

どこかあたしに似ているようで、不思議な感じがした。

「やっだぁ。方法、ナイフ選んじゃう系?みたいなぁ?」

でもあたし、あんなムカつくしゃべり方は、絶対にしない。
そんなことを思いながらも。
突然のこの女の子の登場に、あたしは固まってしまっていた。
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