タナトスの光
自室に籠城しだした僕を。
両親はなんとか外の世界へと、引っ張り出そうとした。
あの手この手で、僕に刺激を与えてくる。

まずは話し合い。

僕の意思が強固で、うまくいかなかった。

次は兵糧攻め。

上手に食事を隠して摂取していた僕には、ムダな作戦だった。

最後の手段。

ストレスで倒れてみよう。
救急車を呼んで、運ばれてみたけれど、そんなときですら、部屋から出て来ない、我が息子。

そのうち両親も。

そんな息子の状態が、当たり前じゃないけれど、なんとなく当たり前になって。

悩みながらも。

父親は息子の存在を心の中心から消し去って、無視するように。

母親は食事を届けるだけで、やはり息子の存在を心の片隅に追いやってしまったようだった。

両親からすれば。
僕は身内の恥。
ただ家族を、苦しめるためだけの存在。

こんな僕が。
なぜふたりのもとに生まれて来てしまったのかを、僕も両親も上手に説明することが出来ない。
< 31 / 37 >

この作品をシェア

pagetop