タナトスの光
部屋からあまり出なくなってから、すでに六年。

僕はもう、三十代半ばになっていた。

普通ならば。
働き盛りで。
妻がいて、子どももいたりして。

幸せかどうかは、分からないけれど。
それなりに充実した毎日を、送っていたのかもしれない。

それでも、そんな日々が手に入らなかった代わりに。
僕にはひとつだけ、分かったことがあった。

きっと、こんな状況にならなければ、一生涯、分からなかったことだと思う。

小学生時代。
中学生時代。
高校生時代。
大学生時代。

すべての学生時代において。

とても仲が良かった友達は、こんな状況になった僕のことを知ると。
ひとり、またひとりと、僕のもとを去って行き。
誰一人として、僕の周りに友達として、残ることはしなかった。

親友だと思っていた、唯一ひとりの友達でさえ、簡単に僕のもとから去って行き、その後、連絡は一切途絶えた。

こうして、人間のなんたるかを学びながらも。
僕は誰からも、見捨てられ。
本当に、独りぼっちになってしまった。
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