タナトスの光
鉄棒の要領と一緒だ。
そのまま前に、頭から落ちていけばいい。

なぁに、簡単なことだ。

そんな心の声とはウラハラに。

私の両足は、死への恐怖で震えていた。

目をつぶって。
一瞬だ。
一瞬だけ痛みに、耐えればいい。

手の汗で、ヌルヌルになった鉄柵を握り直し、私が飛び出そうと覚悟を決めたとき。

「死にますんかいな?」

拍子抜けする声が、私のすぐ左隣。
一メートルくらい先から聞こえてきた。

私が驚いて、首を動かすと。

黒いローブを、ゆったりと着込んで。
自分の身長よりも、大きな鎌を持った男が。
鉄柵に腰を掛けて、こちらを見つめている。
四十代くらいだろうか。
どこか私に、似ているような気がする。

あまりに突然のことで。
呆然としたまま、私が口を開けていると。

「そりゃ驚きますわなぁ。ささっ、気にせずに続きをどうぞ。」
「と、止めないんですか?」
我に返った私は、とっさにそう口にしていた。
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