タナトスの光
「ところであんさん、死にますんかいな?」
「あ、いえ、なんだか気がそがれて、迷っています。」
正直な気持ちを、私は口にした。

「そうでっか。」
「あのう、聞いてもいいでしょうか?」
この不思議な人物と、私は話してみたくなっていた。

「なんでっしゃろか?」
「変な言葉遣いですね。関西ご出身ですか?」

タナトスの光さんは、大げさにズッコケた。
「そっちかいな、って、どっちでんがな。」

思わず私は、笑顔になっていた。

「あんさん、おもろい方でんなぁ。」

私が、面白い?
今までそんなこと、考えたこともなかった。

「まぁ、そんなことは、どうでもよろしくて。質問には、ちゃんと答えなあきませんなぁ。わては関西出身とちゃいます。こんなごちゃまぜの言葉。関西の方が聞いたら、怒りまんがな。」
「はぁ、そうなんですか。ではどちらから?」

タナトスの光さんは、私の胸を指差した。
「そっからですわ。」
私は不思議そうに、自分の胸を見た。

でもやっぱりそこには、私の胸があるだけで。
「えっと、どちらからでしょうか?」
もう一度、同じ質問を口にしていた。

「だから、そっからでんがな。」
タナトスの光さんは、やはり私の胸を指差す。

私は首をかしげると。
「ええっと、どちらから。」
「ええ加減にせんかい!」

タナトスの光さんとのやり取りに。
私は声を出して、笑っていた。
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