タナトスの光
大鎌が、私の身体を切り裂いていく。
思わず目をつぶった私は。
そんな光景を、暗闇の中、描いていた。
それにしても、おかしい。
あんな大きな鎌で切りつけられたら。
きっと痛いはずなのに。
痛みがまったく、ない。
恐る恐る、私が目を開けると同時に。
後方で、扉の開く音がした。
振り向けばそこには。
「あなた!」
「お父さん?」
聞きなれた、妻と娘の声。
ふたりの顔を見て。
ホッとして笑顔がこぼれた。
「こんなトコで、なにしてんの?」
娘が不思議そうな顔で、尋ねる。
「お前達こそ、どうしてこんな所へ?」
「それがね、うまく説明が出来ないんだけど。」
妻がそう言ってから、続けた。
「なにかが切られたような。なんていうか、悪夢を断ち切ってくれたような、そんな感覚がして。」
「そうそう、まさにそんな感じ。」
娘がうなずいて、同意する。
「それでふたりして、なぜだか無性に屋上へ行きたくなって、そしてやって来たら、あなたがいたの。」
妻と娘は、神妙な顔をしている。
「そうか。」
私はうなずいて、鉄柵へと目をやった。
タナトスの光さんの姿は、影も形もなかった。
思わず目をつぶった私は。
そんな光景を、暗闇の中、描いていた。
それにしても、おかしい。
あんな大きな鎌で切りつけられたら。
きっと痛いはずなのに。
痛みがまったく、ない。
恐る恐る、私が目を開けると同時に。
後方で、扉の開く音がした。
振り向けばそこには。
「あなた!」
「お父さん?」
聞きなれた、妻と娘の声。
ふたりの顔を見て。
ホッとして笑顔がこぼれた。
「こんなトコで、なにしてんの?」
娘が不思議そうな顔で、尋ねる。
「お前達こそ、どうしてこんな所へ?」
「それがね、うまく説明が出来ないんだけど。」
妻がそう言ってから、続けた。
「なにかが切られたような。なんていうか、悪夢を断ち切ってくれたような、そんな感覚がして。」
「そうそう、まさにそんな感じ。」
娘がうなずいて、同意する。
「それでふたりして、なぜだか無性に屋上へ行きたくなって、そしてやって来たら、あなたがいたの。」
妻と娘は、神妙な顔をしている。
「そうか。」
私はうなずいて、鉄柵へと目をやった。
タナトスの光さんの姿は、影も形もなかった。