みどりちゃんの初恋

 ちぃの笑みに見惚れるあたしは、キッチンに向かうちぃの後ろ姿を目で追う。

「ねえ、そういえばさー。今日って泊まる約束してたっけ?」

「してないわよ」

「はっ?!じゃ、じゃあっ」

「タツキとふたりっきりが嫌だったのよ。ねえ?コマチ、レオン」

「れ、レオンっ?!」

 コマチっていうのはちぃが昔から飼っていたペルシャ猫だけど、レオンって……レオンって誰っ!?

 驚いて目を見開くあたしそっちのけで、コマチちゃんと一緒に抱かれて現われたのは、柴犬の子犬。

「ちっちゃーいっ!」

「最近飼い始めたの。可愛いでしょ」

「……ていうか、どうしてちぃのペットは見た目と名前のギャップがありすぎるの?」

 「そんなのなんとなくよ」首を傾げるあたしに一言投げて、寝室に向かうちぃ。

「トイレ行ってから行くねー」

 そうちぃの背中に話し掛けて、トイレに向かうあたし――と見せ掛けて。

 コンコン。

 タツキさんの部屋のドアを叩いた。

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