みどりちゃんの初恋

「みどりさんどうかした?」

 心配そうにあたしの顔を覗くタツキに「だっ、大丈夫っ」と叫んで、タツキさんの部屋を飛び出した。

 とりあえず荷物をまとめて静かにちぃの家から出る。

 ヒロっちがどこに来るか分からないから、とりあえずマンションの下にあるベンチで座って待つことにした。

 厚い雲に覆われた夜空には星が一つも見えない。その所為で、ぐっと辺りが暗い気がする。

 ……ちょっと怖いなあ。

 別に寒いわけじゃないけど、一人じゃ怖くて心細くて、ベンチの上で自分自身を抱くように体育座り。

 早く……早く来て、ヒロっち……。

 自分を安心させるためにさらに強くぎゅっと自分自身を抱く。

 怖いし怖いし眠いし。

 ……寝ちゃう?寝ちゃったら、全然怖くないよねえ?

 ことんとベンチに横たわったあたしは吸い込まれるように、眠りの森へ誘われた。


 心地よい温かさに、車に乗ってるみたいな揺れ。それに、さわやかな香りがする。

 ん……と目を開けると、いつもより視線が高い。

「ふえ? ここどこ?」

 ぐっと少し起き上がった――つもりで「わっ! おいっ」と下から驚いた声と不安定さにぎゅっと何かにしがみついた。

「……あ、れえ? もしかして、あたし、ヒロっちにおんぶされてる?」

「ああ。あんな所で寝るな」

「…………」

 おおおお、おんぶぅぅぅううっ!!

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