みどりちゃんの初恋
ちぃの婚約者でもあり、雄太郎の異母兄弟でもあるタツキさんは、もうちぃにベタ惚れ。
ちぃは手を止めて、タツキさんを一瞥。
「……ねえ、タク。隣の犬、叩き起こしてくれない?」
ガツ。
「っ!!いってえなぁああっ!!」
がばっと起き上がったハヤシっちは、一生懸命頭をさする。
はあーっとため息をついてから「おにぃちゃあん〜。タクが苛めるぅ〜」と口を尖らせた。
「雄太郎。気持ち悪いわ」
限りなく冷たい声音でぴしゃりと言ったちぃは、再び紙面に視線を落とす。
頬杖をしながら、もうそりゃあ色っぽい曲線をフルに晒しながら、脳ミソフル回転。
「……ちぃー」
この体勢のままちぃに話し掛けると、一瞬目を丸くしてからふわりと微笑んだ。
「みどり起きてたの?」
「ハヤシっちと一緒にしないでっ」
「そうね。………あっ。みどりそこの棚から一昨年の球技大会の資料取ってくれない?」
はーい、と返事をしたあたしは、びっしり資料がつまった本棚を見上げた。