みどりちゃんの初恋
「えっ、あっ、その……わっ! ひひ、ヒロっち!おおお、おろしてっ」
「ん? ああ」
少し腰を屈めてくれたヒロっちの背中からぴょんっと飛び降りたあたし。
ちらっちらっと斜め上を気にしながら、黙って脚を動かす。
でも、と思って「ごめんなさい」と小さく呟いた。
「……別に」
ぶっきらぼうに答えるヒロっちだけど、歩くのが遅いあたしに合わせてゆっくりと歩いてくれてる。
隣にヒロっちがいる。
それだけで嬉しくてドキドキするんだけど、やっぱり少しキョリがあるんだよね。
このちょっとしたキョリが悔しいし、怖い。
暗い、狭い、怖い、おばけ、のありがち4パターンが大嫌いなあたしは、びくびくしながら夜道を歩く。
「ひっ、ヒロっち……」
「なに」
「おばけ、いない?」
「いない」
何回も確認しながらそわそわと、いつも通りヒロっちの服の裾を握り締めた。
ぎゅっと、少しでも握ることによってちょっとくっついたり離れたり……っていう作戦を込めてあるんだけど、本当はホントに怖いから。