みどりちゃんの初恋
音に気付いたハヤシっちが素早くドアに向かい「はあい。だれー?」と元気にそれを開ける。
「あれ?カゲじゃん。 どうしたの?タクなら今いないけどお」
……カゲ? あれ?さっき、ヒロっちが呼ばれたときに聞いた、よね?
「ううん。ヒロには用はないんだけど――あっ!」
「……え?」
あたしの顔を見てにこりと微笑んだカゲ君は、さわやか好青年。
「失礼します」と丁寧に軽く頭を下げて、ドアからあたしのところまでやって来たカゲ君は「久しぶり、みーちゃん」とさらににっこりと――
「えっ……みーちゃんて確か――あ!そー君?!」
「当たり。景山総平(かげやまそうへい)です」
通称総くん(あたしのみ)は幼なじみなんだけど、小学校3年の時総くんが引っ越しちゃってからの何年ぶりかの再会。
確か北海道とかに行ってたんだっけ?
「わーっ。総くん変わらないね!」
「みーちゃんも変わってないよ?」
9歳で止まっていた総くんの姿や中身がそっくりそのまま大きくなった感じ。
総くんと昔話に花を咲かせていると、いつの間にかちぃとハヤシっちはそこにはおらず二人だけになってしまった。