みどりちゃんの初恋
一生懸命総くんの手のひらを退かそうと引っ張ったりぺちぺちと叩いてみたりするけど。
離すなんて考えてないらしく、さらにぎゅっと握られた。
「そそそ総くんっ?!」
「僕、そろそろ帰らなくちゃなんだけど。さよならのキスでもする?」
「い、意味分かんないっ」
「分かるでしょ?お子ちゃまじゃないんだから」
こういうことだよみーちゃん、と言いながら総くんはあたしの顎を持ち上げて――
「え? ちょっ……総く――」
たった1・2秒だと思う。なのに、それはすごく長くて触れた唇に感触が残る。にっとさわやかに笑う総くんは「じゃ」と何事もなかったようにあたしに背を向けた。
その背中がドアによって見えなくなった時、やっと肺が酸素を取り入れた。
「なっ、なっ、なーっ!!」
ききききキスしたよねえっ?!
「黙れ」
ぎっと睨まれたあたしはヒロっちの側に駆け寄って見上げる。
「だって!ヒロっちだって見たでしょーっ?!総くんホント意味分かんな――」
「気にすることでもないんだろ?お前の好きそうな男だろ、カゲは。 若干腹黒いのが気になるが、まあいい奴だし。……良かったな」