みどりちゃんの初恋

 嗚咽が漏れないよう必死に歯を食い縛って膝を抱く腕の力をつよ――

「バカ、アホ、ドジ、マヌケ、チビ!」

 ――っ?!!

 えっ? えっ? な、なに?

 なんだか後ろからぎゅうって!ぎゅうってされてる!しかもさっき……え?ヒロっち……?

「カバン」

「ふえ?」

「忘れるな」

「……えっ?」

 カバン?! ……あ!一緒に帰るって言ったもんね、で納得できるかぁああっ!!

 なんなの、カバンって。いや、確かに忘れたけど。だからって、自分のこと好きだって言った女に対して第一声がカバン?!

「意味分かんな――」

 ――い、と言い終わる前にヒロっちはあたしを無理やり正面から抱きしめた。

「ひひひひヒロっち?!」

 ぎゅうっとキツく抱きしめるヒロっちはたぶん加減を知らないと思うんだよね。

 抱きしめられるのは嬉しいけど、

「ぐる"じい"……っ」

 ない胸がもっとなくなるぅううっ。

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