みどりちゃんの初恋
◇◇◇
二人を印刷に回したあとの生徒会室は千紗と卓也の二人きり。顧問の樹はまだ来ていない。
千紗ラブの樹ならこの時間はすでに来ていて「千紗〜千紗〜」が日課である。それが来ないとなると、どうせどっかのギャルにでも捕まってるんじゃない、と肩を竦めるのも千紗の日課。
そしてその夜は決まって「千紗に触り足りない」と食われるのがお決まりなのだ。
しんとする生徒会室の静寂など気にせずそれを壊したのはもちろん千紗だ。
「いつからみどりが好きなの?」
千紗はみどりから報告を受けた日からずっと気になっていた。卓也が本当にみどりの探していた男なのか。
こう遠回しに聞くのは性に合わないが、本人に許可なく聞くわけにはいかない。もしかしたら、みどりは聞かないという可能性だってある。
まあ、寝込みを襲ったわけだし、聞きにくいだろうけど。
「別にいいだろ、そんなこと」
顔も上げずなおも作業を続ける卓也は抑揚のない声で呟いた。
こうして卓也の性格に触れれば触れるほど、千紗は毎回思うのだ。
どうして私のあんなに可愛いみどりがこんな男に惚れてしまったんだろう、と。