みどりちゃんの初恋

 さあ行くわよ、とあたしの腕を掴んで歩き出したちぃは栗色のポニーテールを左右に揺らす。

 どこに行くんだろうって思っても聞けないのはただなんとなく行き先が分かってるから。

「……なによ。鍵掛かってるじゃない」

 あたしの腕を掴んでいた手で短パンのポッケから鍵を取出し差し込んだ。

「あれ? どうしたの?」

 ドアの向こう――生徒会室内では携帯とにらめっこしていたハヤシっちがきょとん顔でこちらを見つめている。

「ハヤシっち何してるのー?」

「ユメコさんに電話しようかどうか迷ってるんだよねー」

 「ユメコさん?」と首をかしげるあたしに雄太郎が「俺の大好きな人」とにっと笑った。

「みどりちゃんタクと一緒じゃないの?」

「後輩ちゃんと戯れてるよーだ」

「なに、もうケンカ?」

「そんなわけないじゃーんっ。ただ、ちぃがなんか……変」

 棚と壁の隙間に収納されていたミニ脚立を取り出し、棚の一番上に置いてあるファイルを次から次へと捲っていく。

 「森 里美ねえ」お探しの資料が見つかったらしいちぃは脚立から降り――

「私、この女、キライ」

 バンッと里美ちゃんのページを開いたまま机に叩きつけた。

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