みどりちゃんの初恋

「ちっちぃ? どうしちゃったの?」

 ミニ冷蔵庫(タツキさんに買ってもらったの)から缶のお茶を取り出してごくごく飲むちぃは誰がどう見ても怒ってる。

 里美ちゃんの資料――所謂簡単な写真入りプロフィールみたいなもの。これは全校生徒分に教員分もある。

「千紗あ、この子がなんなの?結構キレイめな子だと思うけ――」

「だから男ってバカなのよ」

 ギッとハヤシっちを睨んだちぃはため息をついた。それもなんだか大きいため息。

「この女中身真っ黒よ」

 ふんっと鼻を鳴らすちぃはじっと生徒会室の扉を睨む。「ほおら、噂をすればなんちゃらって言うじゃない」と言いながら。

 「失礼します」カチャリと開いたドアの向こうには、品のある微笑みを浮かべる森 里美ちゃん。

「2年の森 里美です」

 丁寧に挨拶した里美ちゃんは「会長」と澄んだ声でちぃ呼んだ。

「私に何か用ですか?」

 怖っ!と顔を見合わせるあたしとハヤシっちは、異様に綺麗なちぃの笑顔から目を反らした。

 噴火に向かって徐々に真っ赤なマグマが溜まっているだろうちぃは「森さん?」とさらににっこり。

「いえ、会長ではなく笠井みどり先輩に用があるのですが」

 ――え? あたし?

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