みどりちゃんの初恋
……ヒロっちのことが好きっていう子と話すときはなんだか楽しそうだったくせに。
それが悔しくて、あたしはすっとゆっくりと目を反らした。
「おい」
頭の上で声が聞こえるけど、ぎゅうしてくれるまでシカトしちゃうんだからねっ。
「おい、笠井」
相変わらず頭の上から聞こえるそれを無視するあたしは短パンの裾をいじっ――
「何隠してる」
――えっ?! か、隠してるって……そのぉ、えっと……例えば里美ちゃんのこと?
「別になーにもっ」
ヒロっちのことが好きって宣戦布告されちゃったあ、なんて言えるかぁああっ!!!!
ていうか!どーしてあたしが何か隠してるって分かっちゃったのーっ?!
「……ほんとに、なにも隠してないもん」
ゆっくりとヒロっちを見上げれば「嘘つきは泥棒のはじまり、って知らないのか」とくっと顎を持ち上げる。
うっ……やばい。もしかして怒ってらっしゃる?
「もっ、もちろん知ってます」
「じゃあ言え」
「なにも隠してないもんっ」
銀縁眼鏡の向こうで鋭く光る眼が怖くて必死に逃げる。
「じゃあ何故、あんなところに行ったんだ。自分が方向音痴なのが分かってるだろ。誰かに連れていかれた、そうだろう? な・ぜ、連れていかれたんだ、言え」
わっ、わっ!! 半分くらいバレてるぅ! どーしてぇ?!