みどりちゃんの初恋

 里美ちゃんのこと言わなきゃダメなのかな?で、でもっ……。

 例えば、話したとして、もし、ヒロっちが里美ちゃんを選ん――考えたくない、考えちゃいけない……。

 それでも、あたしと里美ちゃんを天秤にかけるなら、音を立てて里美ちゃんに傾くもん。

 分かってる。そのくらい里美ちゃんがキレイだし年下だし……それにヒロっちのことを知ってる。

「笠井。どうして言わないんだ。俺に言えないようなことなのか?」

 そうだよ……言えないから困ってるんじゃん。

 どうすればいいか分かんない。だから、ずっと黙ってた。そしたら、ヒロっちが不意に悲しげに見えた気がして……ぎゅっと抱きしめられた。

「……変な奴に何もされてないか? 大丈夫、なのか……?」

 ――心配、されてる……?

「え……なん、で?」

「坂桑のことがあったから。あいつも長谷川には言わなかっただろ。だから、お前も――」

「違う。違うよ……ヒロっち」

 バカだな、あたし。

 ヒロっちは怒ってなんてなかったのに。あたしのこと、ただ、心配してくれてただけなのに。

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