みどりちゃんの初恋

 里美ちゃんのこと、話しても大丈夫だよね。 あ、でも。里美ちゃんの気持ちは言わないでおこうかな。

 だって、ね?

 宣戦布告を受けたんだもの。それを真っ正面から受けとめて、正々堂々胸を張って戦うのが彼女だもん。

 お互い、ずるはなし!

「あのね? 里美ちゃんに相談したいことがあるって言われたの。それで、生徒会室(ここ)じゃあれだからってちょっと遠くまで行っただけ。 独りになっちゃったのは、里美ちゃんのケータイが鳴って、体育館に戻らなくちゃいけなくなって……。でも、あたしがまだあそこにいるって言っちゃったからなの」

 ホント:ウソ=3:7

 ま、まあ! あたしとしては、上出来きだもんね!バレてなかったら!

 あたしが話し終えても黙ったままで、やっと「……ヒロっち?」と呼んだとき、あたしから体を離して、

「……里美、が?」

 ――えっ。
 今、“里美”って言った……?

 どうして……? あたしまだ“笠井”って呼ばれてるのに。“みどり”なんて呼ばれたことすらないのに……。

 それくらい里美ちゃんは“特別”なの?

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