みどりちゃんの初恋
ショートカットが少し伸びたそれにそっと指を通す卓也。本人は気付いてないが、相当にやけてる。
くるくるっと、つるつるの髪の毛を人差し指に絡めていた卓也は気付いてしまった。自分がにやけていることにではなく、みどりに谷間があることに。
谷間……いや、谷間予備予備軍。ただの予備軍ではなく、予備軍の予備の谷間。平たく言えば、ニセモノ。
「か――」さいと言い掛けて卓也は口を閉じた。仕方ない。たまにはいいだろう。
「みどり」
艶のある、でも男らしい低い声がみどりの耳に注がれた。
ぴくり、と動いた小動物は眠たそうに目を擦り、嬉しそうにはにかむ。
「……ヒロっ――」
「ちゃんと呼んでみろ」
眠たそうな目のみどりは不思議そうな顔をして起き上がった。卓也の両頬に小さな手のひらをくっつけて、じっと見つめるみどり。
薄く開いた唇はほんのり桜色。「あ」と小さく呟いた声は可愛らしい。
「すき」
恥ずかしそうに、でも嬉しそうに顔を綻ばすみどりの脳には『眠い・ヒロっちがみどりって呼んだ・だいすき』で埋め尽くされている。
……ただ単にみどりは寝呆けているだけ。