みどりちゃんの初恋
おもむろに卓也の手を優しく握り、よろよろと歩きだしたみどりは今夜の寝室のドアを開けた。
「一緒に寝るの」
ふあぁ、と欠伸をしながらシングルサイズの(千紗の)ベッドの壁ぎわまで寝転んだ。
布団に潜ったみどりは一瞬寝て、あれ?と不思議そうな声と共に布団を捲る。
「寝ないの?……あ。壁ぎわがいい?でも、あたし壁ぎわじゃないとベッドから落ちちゃ――」
「みどり」
「ふぇ?」
「俺は下で寝る」
何もしないと言った卓也だが、隣でキャミソール一枚にタオル地のショートパンツだけで寝てる(子どもっぽくても)好きな女と一緒に寝れるわけない。
それに、ここのバカ若夫婦のおせっかいによって、枕元に置いてあるテディベアが持つバスケットにコン……おっほん。
しっかりと“近藤さん”が数人スタンバっている。
「どうして? やっぱりあたしと一緒に寝たくないの……?」
卓也はみどりの頭を撫でながら、その近藤さんをテディベアごとゴミ箱に落とした。
「そうじゃない」
「じゃあどうして? それじゃあたし――」
悲しそうに視線を落としたみどりは口を閉ざした。