みどりちゃんの初恋
起き上がったみどりはゆっくりとベッドから降りて、
「……あたしが下で寝る。 おやすみ」
小さな背中を卓也に向けたまま呟いた言葉はか細くて消えてしまいそうだった。
部屋の壁側にぴったりとくっついて小さく丸まるみどりの背中は小さく震えている。
何もしないと言った卓也。一緒に寝ないと言った卓也。一緒に寝たくないわけじゃないと言った卓也。そのすべてがみどりの涙に繋がっている。
何もしないのに一緒に寝ないなんて、あたし、ヒロっちにどう思われてるの?
眠気が襲ってくる中ぐるぐると巡る疑問。反対に卓也も卓也で歯痒い思いでその小さな背中を見つめていた。
好きな女を目の前に何もしないと言った。それを守るためにも一緒に寝ないと言った、のに。
その所為で笠井を傷つけてる。また、泣かせてしまった……。
「……みどり」
小さな背中に呼び掛けた声もまたか細いものだった。
「みどり。 ……こい」
ベッドに腰掛けた卓也は少し恥ずかしそうに微笑んでいる。寝呆け眼のみどりはごろんと仰向けになり顔だけ向けた。
ふわりと微笑んだみどりは両手を広げた。
「……こい、じゃなくて……きて?」