白いジャージ2 ~先生と青い空~



お父さんの病名は 「一過性全健忘」というものだった。



先生も私もお母さんも、

もちろんお父さんも初めて耳にする病名。



原因はまだわかっていないらしいんだけど、突然記憶を失い、発症している時間は、新たに記憶を書き込むことができない、という不思議な病気。



24時間以内に記憶は戻り、何事もなかったかのように普通に生活を送ることができる。




再発率も低く、経過は良好だと聞いて安心した。




お父さんの場合、2,3年の記憶を失っていた。



数日前からの記憶がなくなる人もいれば、お父さんのように年単位で失う人もいる。





その記憶は24時間以内に戻るが、その24時間に起こった出来事は記憶として残すことが出来ないため、永久に失ったままだそうだ。



お父さんは笑う。



「せっかく直と和人君がわしの為に駆けつけてくれたのに、その場面を覚えてないんだよ。」



「私、お父さんの手握ったんだよ!!」



「本当か?もったいないことをしたなぁ。覚えてないからもう一回握ってくれよ!」



冗談を言いながらの穏やかな夕食。



その場にいなかったお姉ちゃんへの報告会。





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