夜明けを待って
「須藤さん、目が覚めましたか。」


今度は右側から声がした。


『医局長 半田』と名札をつけた、五十代くらいの男性が優しい笑みを浮かべて立っている。


「気分はどうですか」

「普通の寝起きみたいや」


ガラガラに擦れているものの、何とか声が出る。


「良かった。いくつか質問をさせていただきたいんですがね…後のがよろしいでしょうか」


半田がベッドの下から丸椅子を出してきて、横に座った。


「いや、別に今でいい」


そう答えると、半田はゆっくり頷いて、お母さんと朱里を病室の外に出るように促した。
< 52 / 69 >

この作品をシェア

pagetop