夜明けを待って
ただひたすら泣いて泣いて、二時間経った頃に落ち着いた。


何でか胸のつっかえが取れて、自然に背筋が伸びる。


「疲れてたかな…」


ベッドから降りて、洗面所の鏡の前に立つ。


花街の“揚羽蝶”が、やけにスッキリした顔をして映ってる。


いつだったか…二年前に白血病で亡くなった一番の得意客が


「揚羽蝶や。志音、お前は揚羽蝶や」


そう言ってくれた事があった。
< 63 / 69 >

この作品をシェア

pagetop