境界

苦悩のはじまり

 幸子が気づいたときには、ホテルの一室の中だった。
 
 幸子は戸惑っていた。
 
 酔っていたとはいえ、なぜここまで来てしまったのか?
 
 今すぐ、帰ろうと思えば、それもできる。
 
 しかし、幸子は自らは部屋を出ようとしなかった。
 
 何かを期待しているわけではなかったが、帰る気もなかった。
 
 ただ、戸惑っていたのである。
 
 それを察してか、吾郎はすかさず幸子の肩を抱き、
自分の体の元へ引き寄せたのであった。
 
 女の扱いには慣れている吾郎にとっては、
幸子の心理状態を詠むのも、お手のものだった。
 
 その後は、吾郎に身を任せ、なすがままだった。

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