境界
【第11章】逮捕
 その日は、突然やってきた。

 ある朝、
幸子の家に警察が来た。

 名誉毀損罪と脅迫罪で、
榎坂吾郎が告訴したのである。

 幸子は、多数の人たちに対し、
メールで榎坂吾郎との不倫に関して
言いふらしていたのである。
 また、榎坂吾郎に対して、
金を脅し取ろうとしていた。
 最も、幸子はその気は更々なく、
その時の気分で言っていただけである。
 だから、訴えられるなんて、
予想をしていなかった。

 僕も全く考えていなかった。
というのも、告訴でもしたら、
公になり、自分の子供たちにも
知られる可能性があり、
 また、元はと言えば、
自分が原因を作っているわけで、
その立場でありながら、
告訴をしてしまうと、
告訴をした吾郎自身が
周囲から白い目で見られることは、
容易に推測できたはずである。
 だから、絶対に自らそんなバカなことは
しないだろうと高をくくっていた。

 想像以上に、この男はバカだった。
 規格外のバカである。

 この後、吾郎は自分のバカさ加減を
嘆くことになる。





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