くだらない話
「私あなたの背中とっても好きよ」
女はそう言う
「大きくて暖かくて優しいの。
まるであなたそのものよ」
いつの間にか涙も乾いて
いつものように穏やかな笑顔だった
少し安心した僕は自販機に向かい
コーヒーと紅茶花伝を買った
僕はコーヒーを少しずつすする
女は紅茶花伝を飲んでいる
僕達は背中を合わせてじっと月を見た
今日は綺麗な三日月だった
三日月が雲に隠れると
女はひとつ息をついて
また背中に顔をうずめた
「ありがとうね。いつもいつも。」
言うと女は立ち上がって
手をふって小さな声でまたねと言った
彼女の後ろ姿を見送ると
僕はポケットに手をつっこんで
三日月を見上げた
「あなたの背中が好き」
きっとそれは女の心からの本音で
だから僕は彼氏じゃないんだろう
でもそれで良い気がしたんだ
今日はとても綺麗な三日月だから。