俺様のカゴの中
あたしは虎宇の妹だから、虎宇の全部を知ってるわけじゃない。



でも家にいる虎宇は完全に偽りの虎宇。



アスカといる時くらいは…ちゃんと気を抜けてるかな?



「で、水曜は行くんでしょ?」

「うん」

「タイラなら俺がうまいことやってあげるから。普通のデート、楽しんできな」

「タイラさんと虎宇ってなにかあるの?」

「ヒミツ」



虎宇を信じよう。



今まで虎宇はあたしを救ってくれていたから。



なにかあったら力になってあげられるくらい強くなりたいな…。



虎宇の部屋を出て、自室に戻ったら無性に雷さんの声が聞きたくなった。



仕事してるかな?



忙しかったら出ないから、覚悟して電話を鳴らした。



「おぅ、どうした?」



出た…。



低くて脳に響くような男らしい声…。



「声が…聞きたかった…です…」

「乙女だな」

「乙女です…。飲んでました?」

「飲んだね。軽くだけど」



雷さんは飲まない日の方が少ない。



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