明日、お兄ちゃんが結婚します
・消えない嫉妬
朝から気分が悪かった。
原因はわかっている。
今日も春菜さんが来るからだ。
今日はたまたまお兄ちゃんと春菜さんの仕事の終わりが同じらしく、ついでに家へ寄ることになったという。
そしてさらにそれに重なって、両親が帰国するとの連絡が入ったのだ。
春菜さんは両親が帰国するのなら久しぶりに家族団らんの場を設けたほうがいいと遠慮してくれたけれど、お兄ちゃんは
『春菜も家族になるのだから、遠慮しなくていい』
そういい、春菜さんを家へ呼んだのだった。
「理沙ー。どうしたの、ぼうっとして」
はっと顔を上げるとすでに授業は終わりのチャイムをなり終えていて、心配した友達があたしの顔を見つめていた。
「具合でも悪いの? 保健室、行こうか?」
「ううん、心配かけてごめんね。大丈夫。あぁ、そうだ美羽、次選択授業じゃん。急がないと!」
「あっ、忘れてた! 急ごう」
くよくよ考えたとしてももう遅い。
おとなしく現実を受け入れること。あたしに残された選択肢はそれしかないのだ。
そう理解しているけれど、やっぱり心がついていかない。
***
「理沙」
後ろから頭をくしゃくしゃになでられ、驚いた体が跳ね返る。
一瞬その手の感触がお兄ちゃんとかぶったけれど、そんなことありえないから、そんな考えを振り落とした。
「もう、髪の毛くしゃくしゃになったじゃん! バカ悠(はるか)」
「お前の髪はいつもくしゃくしゃだろ」
そうやって明るく意地悪をいうのは、家が隣同士の幼馴染。
佐伯悠(さえきはるか)。
はるか、というくらいだから名前だけ見たら女の子みたいだけれど、悠はれっきとした男の子。