明日、お兄ちゃんが結婚します
「さ、理沙ちゃん。早くあがって。ご飯できてるわ。さめないうちに食べよう」
あたしは春菜さんに促されるがまま部屋へ入る。
「本当春菜ちゃんはお料理上手ね。気立てもいいし、美人さんだし。凌は本当いい人見つけたわ」
「そんなことないですよ」
笑い声が響く。
誰もがお兄ちゃんと春菜さんの結婚を祝福している。
あたしだけだ。
あたしだけ、こんなにもどす黒い思いを抱えているのは。
あたしだけだ。
あたしだけ、二人が別れてくれたらいいのにと願っているのは。
「りぃ、お前体調悪いんじゃないのか?」
あたしの大好きな声が、あたしの名前を呼ぶ。
「えっ?」
うつむいていた顔を上げると、お兄ちゃんと目が合った。
それだけなのにあたしの心臓はつかまれてきゅんと胸がなる。
毎日あっているのに、あたしは毎日が初恋だ。
「りぃ、目の下にクマ。お前、最近痩せただろ」
悠以外誰も気がつかなかった。
おまけに毎日あっているのだから些細な変化なんて気づかないだろうに。
あたしのことを心配してくれている。ただそれだけが嬉しい。
「だ、大丈夫……普通に元気だし!」
あたしは笑顔を取り繕う。
せめて。
せめてみんなで一緒にいるときくらい、お兄ちゃんの妹でいないと。
お兄ちゃんはそんなあたしのから元気を察したのか、おでこにでこピンをしてきた。
「たっ……」