明日、お兄ちゃんが結婚します
夕食も終わり、談笑も盛り上がったころ。春菜さんが飲み物を切らしたのでコンビニへいくと言い出した。
もう夜遅いからとお兄ちゃんとともに。
でもたとえ昼間だとしてもきっとお兄ちゃんは付いて行くだろう。
お兄ちゃんはそういう人だ。
「理沙ちゃんも行く?」
あたしの視線に気がついてからか、笑顔で春菜さんが訊いてくれる。
あたしは首を横に降り、笑顔を作る。
笑えない。うまく笑えない。
本当は一緒に行きたい。
お兄ちゃんと行くならば、どこだって着いていきたい。
だけど春菜さんが今はいるから。
だからついていけない。
きっとあたしは嫉妬で死んでしまう。
「じゃあ、行ってくるよ」
「うん、気をつけてね」
仲良く並ぶ二人に言う。
せいぜいコンビニといっても20分もすれば帰ってくるだろう。
ほんの少し離れることがつらいなんて。
そしてそれが春菜さんと一緒だから余計につらいのだ。
「おにいちゃ……」
やっぱりあたしも行きたい。
そういおうとして玄関に向かった足が一瞬で止まった。
「……春菜」
……お兄ちゃんが。
お兄ちゃんが春菜さんに、キスをしていた。
あたしの頭を優しく撫でてくれるその大きくて暖かい手が、春菜さんの頭を優しく撫でる。