テアトロ・ド・ペラの憂鬱
床から復活したピピが言う。
彼は相変わらず懲りもせずに、裸足の彼女を抱き込むようにバグをして、あーんとチーズを催促している。
今度は殴られなかった。
「ん、去年、カナダへバカンスに行った時の?」
「あぁ、そういや、そんなもん買ったな…」
六階の保管庫に置いてあったボーガン。
春のカナダにて、勝手に侵入した個人の私有地でウサギ狩りをした時のもの――当然、非合法なのでみんなは真似しないようにネ。
「それ、仕事じゃないんじゃないの」
裸足の彼女が言う――だんだん面倒になってきた。
愛称だけでも先に紹介しても構わないだろうか…セッタが不在ということは、彼女がなにかする度に「裸足の彼女」と言わなくてはならない。
昔、流行ったこざかしいドラマじゃあるまいし。
「…アコ、俺にもチーズ」
おっと、とうとうガフィアーノが先に言ってしまった。
「はあい、あーん」
彼女の愛称は、アコ。
きちんと発音すれば「アンコ」なのだが、いい加減万歳イタリアーノな彼らはいつの間にか「ン」を外して呼ぶようになった。
彼女の詳細とその由来はまあ、また後日にでも。