テアトロ・ド・ペラの憂鬱
「…あ、もしかしてこの前のミス?やだなあ、パパ、怒られてんのかなあ」
アコが自身に覚えのある失態を思い出して青ざめた。
パパのお仕置きはいやだ。
減給だっていやだ。もし報酬から引かれたらどうしよう。
「そんなわけないでしょ。トラブルはあったけど成功したんだぜ」
「まあ、「今」の本部は、トラブルひとつにうるさいからな」
グラッパの瓶を揺らしながら、ボウラーとピンクキャンディーを咥えるガフィアーノが口々にフォローする。
「現場で計画通りに進むとでも思ってんのかね、」
ジャポーネの映画で、ジャポーネの俳優が叫んでいたセリフをいけしゃあしゃあと言うのはピピ。
―――ギィ…。
そうしてアコとボウラーが雨の中から買ってきたランチを半分以上平らげた頃、錆びた玄関扉が開く音がした。
音と共に雨に濡れた土の臭いがする。
一瞬、顔色が失せ、全員が手を停めた。
「帰った」
が、マイペースに吐き出された低い声に全員が止めた手を再び動かし始める。
「おかえり、セッタ」
現れたのは上半身裸で、足首まで伸びるやぼったいバルーンパンツをサスペンダーで釣っているガタイのいい男。