テアトロ・ド・ペラの憂鬱







「あの日なんだよ、きっと」

キャンディボックスに針のないレコードプレイヤー、コープの買い物袋、南半球が破けた地図、誰からもらったのか知らないが、ミゴーネ菓子店のテントウムシがモチーフになった記念パッケージ、ジャポーネのマンガやアニメ、誰の車の物か、シルバーのナンバープレートが七枚、シェイバー、脱ぎ捨てたジャケットとパンツ、コンドームがばらばら数枚、その他諸々に囲まれたベッドの上で、ボウラーはポルノ雑誌のバックナンバーをめくりながらそう口にした。


「もういや!あんたとはもう絶っっ対に寝ない!ピピなんかしんじゃえ!」

また悲鳴。
声から感じ取るに、泣いているかもしれない。


「お前みたいなバカ女、もう二度と抱かねえ!」

ピピもまた然り。
ふたりはこのテアトロ・ド・ペラの住人の中でも特にひどい感情直下型で微妙なヒステリー持ち。



ガシャーンッ!




「あ、窓、割れた」

ふたりの喧嘩は日常茶飯事。

一日中アモーレを囁きあい、ベッタベタしてる時もあれば、顔を合わせた瞬間に手近にあった物という物が矢の如く飛び交う時もある。

今回はまさに後半のそれ。






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