テアトロ・ド・ペラの憂鬱







いつもは整然と片付けられている、彼女の部屋。

しかし今は、床という床にルージュやパウダー、雑誌、洋服、靴やチョコレートが転がり、壁には割れたグラスが突き刺さっている。
まるで物盗りにでも入られたかのような惨状だった。


―――まあこんな事、いつものことなのだが。


そんな惨状の中で、アコはやはり散らかったベッドの上で顔を俯け、体育座りをしている。

下着は総レースのパンティのみ、露になった上半身はそのままに、アコは顔も上げない。


「…アコ」

やはり皆と同様、彼女の様子が気になったパパ役のカランドゥラが、声色を変えて彼女を呼んだ。



「なにか、あったか?」

じっくりと、一言一言を噛み締めてカランドゥラ、もといカーラは、器用に散らかっている物を避けながらアコに近付く。



「…なにもない」

簡潔な答えだった。

沈み込んだ声は、先程までヒステリックに叫んでいたとは思えないほどの消沈ぶり。






「…アコ、いや、ジュリエッタ、こっちに来い」



―――ジュリエッタ。


これは彼女の本名だ。
いつからか、テアトロ・ド・ペラの住人達は彼女を「ア(ン)コ」と呼ぶようになった。






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