テアトロ・ド・ペラの憂鬱







角にあるクレメリーア(アイスクリーム屋)を過ぎた裏路地。

小さなバールや民家、アパルトが軒並み並ぶその路地で、特に目立つアパルトがある。

ローマにある有名なオペラ劇場「Il teatro d'Opera」と同じ名前がつけられたなんとも図々しい七階建ての「テアトロ・ド・ペラ」。

古いレンガと、エスターテ(夏)に繁る蔦が雰囲気のある築五十年。
とは言っても、このイタリアでそういった建物は珍しくない。

どこか静かで、冷ややかな建物からはいつも色んな音がして、どこか変わった人達が出入りしている。



朝、どんなバール(立ち飲み屋)より美味しそうなカフェ(エスプレッソのこと。イタリアではこう言う)の香りが漂ってきて、何事か楽しそうに談笑する声。

たまに朝帰りしてきた男――金髪のマッシュ頭だったり、緑色の短髪だったり、黒髪の長髪だったり、はたまたえらい男前であったり、はたまた見る度に別人に見える女性であったり、フランス人のような男でだったり――を責めたり、労ったりする声も聞こえたりする。

ちょっと一般人から浮いている彼等は、僕が思うよりずっとうまく生活しているようで、していないようだった。






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