テアトロ・ド・ペラの憂鬱







その日、僕の恋は完全に終わった――じゃなくて、そんなふうに、噂のアパルト「テアトロ・ド・ペラ」には、変人という枠には収まらないような人間達がひしめき合っているのである。



『テアトロ・ド・ペラの住人はみんな近未来からトリップしてきた超人なんだZE!』

とか。

『就職に失敗した住人達があのテアトロ・ド・ペラでプロフェッショナルな指導を受けている』

とか。

『マフィアの下っ端共が下剋上を狙ってあのアパルトで集会を開いている』

だの、更に。


『ひとりの娼婦と彼女に借金をしている男達が彼女に尽くすことで借金チャラを狙い共同生活をしている』

など、等。

信憑性もなければ、根も葉もない噂だが、あながちハズレているような気もしない。

例え上記の四択のいずれかがリアルだとしても僕は驚かない。

いや、ちょっとは驚くかもしれないけれど、なんだかあの異様な六人にはなんでもアリな気がする。


晴れたある朝、緑頭がキラキラと眩しい男が高い脚立に登って割れたガラスを器用に修理してようが、謝肉祭だというのに大量の肉を買い込む金髪の男とそばかす顔の女がいようが、それはもう範疇内。






< 39 / 80 >

この作品をシェア

pagetop