テアトロ・ド・ペラの憂鬱








アパートの前を通る度、そばかす女の恋人が変わるがわる変わっていたり、たまに男同士でイチャコラしてたりなんてもう序の口。


彼等はおかしい。イカれてる。

きっとママンのお腹の中に居る時からおかしかったに違いない。

羊水の中でヘヴィな音楽を聴きながら、ナイフを構えてへその緒を狙ってダーツをするような――きっとそんなこどもだったのだ、彼らは。

だからこそ、美しい女に変身したそばかす女が。



「スィニョーレ、どーていクン。相変わらず童貞かしら?」

なんてジェラードを片手に僕をからかってくるんだ。

そうに違いない。

ハロウィンのどんちゃん騒ぎも、ナターレの室内花火大会も、真夜中の夜泣きもヒステリーも、毎回毎回違う相手とベッドでアムールを囁くことも、彼らにとっては人生のほんの一部の娯楽でしかないし、お互いがお互いを許容しあうアパルトの住人でしかないのだ。


だから「テアトロ・ド・ペラ」の六人の住人は、今日も輝く地中海の太陽の下、ミラノ風リゾットをつついているのだろう。


にやにや下品な笑みを浮かべ、シガーを吹かしながら。








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