テアトロ・ド・ペラの憂鬱
それは鮮やかに晴れた夜空だった。
雲ひとつない澄んだ夜空に、地上から発せられた灯りは優しく繊細に星を隠している。
地中海から吹く潮風は、鼻を鳴らせば肺を浄化してまた外へ流れていくよう。
まるで絵本の舞台にでも選ばれるような夜。
そんな夜に、テアトロ・ド・ペラの住人達は集中して息を詰め、普段はお願いされても閉じない口をお行儀良く閉じていた。
ここはリビング。
テーブルに置かれた魚のマリネが美味そうだ。
しかし今は、それに手を付けるような人間はひとりとしていない。
どこにでもありそうな平凡なリビングの光景。
しかしテアトロ・ド・ペラの住人六人は、揃って真面目な顔をして、黙ったまま口を開かない。
手元のエスプレッソにすら手を付けないでいる。
否、それが許される空気ではないのだ。
―――そう、今から始まるのは、戦争に勝つための計略会議、なのだ。
司令官は、アコ。
今回の事件最大の被害者であり、加害者であり、クイーンである。