テアトロ・ド・ペラの憂鬱
そして、そんなアコを雑誌の隙間から覗き込むガフィアーノ。
現時点で彼女を抱いた最後の相手が自分であるせいか、どこかびくびくしながら口を開く。
「…ないの?」
確か今朝、ベッドで脱がした時には生地範囲が広い白地に黒の繊細なレース、上下セットタイプ。
彼女がいつも発するビッチ発言からは想像もできないような貞淑な下着だった筈。
とは言っても、彼女が選ぶ身の回りのものはそれなりにセンスがいいものばかり。
「ない。どっこにもない。お気に入りだったのに!カッツォ!(「チッ」の意。直訳すると下品極まりないのでみんな真似しないでね!)」
問題なのは、本人。
苛立ち紛れに掴んだクッションをセッタの頭上スレスレにぶん投げたアコに、ガフィアーノは呆れたように肩を竦ませた。
当然、自分に火の粉が掛からないように雑誌を盾にして。
「…っ!」
ボフッと見事壁にヒットしたそれは、壁に掛けてあった一枚の小さな額縁を道連れにしてセッタのつむじに落下した。
あんまりだ、傍目から見ていても酷い八つ当たりだ。
それでもセッタは怒らないから、大した奴だと感服する。