テアトロ・ド・ペラの憂鬱











「事件です」

そうふざけたセリフと乱暴なノックが四回。

それを合図に、部屋に入ってきたのはアコ自身だった。




「…どうした」

パパ・カーラは手入れをしていたベレッタをゆっくりとデスクに置く。

音もなく置かれたそれは、アコには到底使いこなせそうにない、ごついウェルロッド。

黒の肢体に銀色の装飾が美しいそれは、痩身のカーラによく似合う。



「事件なんです、」

だからそれを聞いている、とカーラは訝しげにアコに視線を向けた。

珍しく敬語を使うところを見ると、よほど困っているらしい。


「…アコ?」

そのまま言葉を発しようとしないアコに近付いたカーラの視線が、すぐに彼女の下半身に向けられた。

入口前で仁王立ちしている両脚、そして最近お気に入りの丈の短い黒のサテンパンツ。

それらは見慣れたものだが―――。



「誘っているのか?」

どうやら下着を履いていないらしい。

夕飯時とは珍しい時間帯だが、まあ性欲というのは時も場所も選らばない。

彼女に関しては、モラルさえも。


「…てめぇこんちくしょう」

しかしそんな彼女から返ってきたのは不機嫌極まりない悪態だった。








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