テアトロ・ド・ペラの憂鬱
「…知るかよ。気のせいじゃねえの」
「気のせいなんかで誰がノーパンで歩き回るか!」
バシーン。
彼女が手元にあった空の木箱をピピに投げつけたのと、ピピがスツールから立ち上がるのは同時だった。
「…なぁに、誘ってんの?」
眉なしのグリーンの瞳が危うげに光る。
にやりと口角を上げて、そのままゆっくりとアコに近付いてきた。
「ちがう」
アコはムカムカと胸焼けでも起こしているのか、鼻の穴を開いてピピを拒絶した。
「なぜ…?いいじゃん」
そんなアコの腰に手を回しながら、薄い唇を開いてアコの耳朶を噛む。
ゆったりとした動きで彼女と距離を詰め、下半身同士で擦り寄るように抱き寄せた。
短いサテンの隙間からまろやかな尻に指を差し込み、ピピはぺろりと舌を出した。
臀部と太股の境界線を、黒いネイルが施された長い指が触れるか触れないかの位置で撫でては戻る。
「な?」
それはピピにとってはアコからの誘いで、アコにとってはピピからの誘いだったが、しかしアコは今それどころじゃない。