テアトロ・ド・ペラの憂鬱
「…だから、さ」
両尻を鷲掴みされながら、目を閉じて呆れるアコ。
そんなアコを余所に、油臭い手を進めて行くピピ――。
ふるりと震える小さな尻が、ピピの欲を少しずつ高めていく中で。
「それどころじゃないって、さっきから言ってるでしょ!」
バコ――ン!
再び。
「ぴぎゃっ」
しかし先程の空箱とは違い、今回は見事にヒットした。
それも最大の急所に。
「…っ、…!」
アコの腰に擦り付けていた股間を思いきり蹴り上げられ、悲鳴と共に白目を剥いたピピ。
そんな彼を見下すアコの目は、マルツォ(三月)に降った雨より冷たい。
「ピピ、何度も言わせないで」
股間を抑えながら、ぶるぶる震えて足元に蹲ってしまった可哀想な眉なし男。
そんな彼の肩にお行儀悪く右脚を乗せ、アコはまるで女王様のごとく言い放った。
「私のパンティが、一枚もないの」
え、一枚も?
それは間違いなく、ここのところ平和なテアトロ・ド・ペラに起きた事件だった。