テアトロ・ド・ペラの憂鬱
慌ててドアの前から退く。
と、そこで、半開きのドアの理由が解った。
―――パンティだ。
恐らく雪崩れ込んだ勢いで脱がせた下着が、丁度ドアと壁の間に落ちたのだろう。
くしゃくしゃになったホワイトの塊が、ドアの開閉を困難にしていたのだ。
「ガ、フィぃ、」
そばかす女の嗚咽を耳にしながら、デリアスはそれを音もなく掴んだ。
彼らの「まぐわい」が終わる前にと、階段を駆け上がる。
情報(5)
そばかす女の部屋は、三階の水色の扉。
下着が入っているのは、クローゼットの一番下の赤いトランクの中。
静かなその部屋を用心深く覗き込むと、デリアスはゆっくりと室内に侵入した。
きょろきょろと辺りを見渡すと、きちんと整然された部屋が広がる。
白い粗壁には、パステルカラーの淡い額縁(絵は飾られていない)と、白い木縁の大きな鏡。
装飾が美しいパイプベッドのヘッド部分の天井は一段低くなっていて、枕元には鳥籠をモチーフにしたランプ。
年季の入ったふかふかの羊毛カーペットは、きれいに手入れされているらしく傷みは見当たらない。