テアトロ・ド・ペラの憂鬱
年頃のバンビーナ(女の子)のような、ロマンチストな女性のような香り。
普段のビッチぶりからは想像もできないような、清楚で女の子らしい部屋だった。
それに少し呆気にとられたが、そんなことは今はどうでもいい。
デリアスは時間に急かされるように、左側のクローゼットを開けた。
そして開かれっぱなしの赤いトランクを発見する。
その中にあるのは、きちんと畳まれた下着セットがずらり。
はめていた手袋をもう一度きちんと確認して、デリアスはパンティのみをビニール袋にひっくり返した。
なるべく痕跡を残さないように、大きなビニールに柔らかな布達を纏めると、部屋の窓から外を覗く。
真下には、予め開けておいたテアトロ・ド・ペラのダストボックス。
ダストボックスとは名ばかりで、いつもゴミひとつ入っちゃいない。
そしてそこめがけて、下着の詰まったビニールを投げ込み、あとは脱出するだけ。
しかし焦りからか、噛み合わせが悪いのか、なかなか窓が開かない。
ガタガタと乱暴に開けるわけにもいかず、デリアスは慎重にドアを開けようと必死になった。