テアトロ・ド・ペラの憂鬱








カタ…。


数秒とせず窓は開き、デリアスの算段通りに投げたビニール袋も見事、音もなくダストボックスに落下した。

使わなくなったマットレスを敷いていてよかったと心底から安堵する。
うまくクッションになってくれたようだ。

同じように窓を閉め、あとは帰るだけ。

順調過ぎてこわい。
自分は天才だったのか。

そばかす女め、チェリーボーイだからってなめるなよ。

にやにやが止まらない。
よし、早く部屋から出よう、と踵を返す。


―――ピン。

しかしここで、デリアスのはめていた手袋が窓枠にひっかかってしまった。

しかも指先の少し弛んだところが器用に窓枠とサッシの隙間に入り込んでいる。
乱暴に引っ張ると、ボロい窓はカシャカシャと音を立てるだろう――それだけは避けなければ。

ギィ。

しかし落ち着いて対処しようとしたその時、デリアスは階上でドアが開く音を耳にした。
階下からは未だにギシギシあんあん言っている声が続いているが、それとは別の―――。



(眉なし牧師だ!)

こんなに早く起きてくるとは誤算だった。

デリアスは焦った。

どくどくと胎内のポンプか過剰作動で動き回っている。





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